黄昏の3本足…リードトランジスタの今後について考える(概ね完結編)


トランジスタトランジスタ騒ぐ以上最低限のマナーかな、とか思って、基礎の基礎を勉強してみたりはしてみている。(意味があるのかは不明(>_<))
関係ないけど、「設計」をいちいち「デザイン」と(脳内で)言い換えるとやる気がなんか出る、っていうか、燃えますね。


第一話:http://d.hatena.ne.jp/OkibiWorksLabo/20100702/tr
第二話:http://d.hatena.ne.jp/OkibiWorksLabo/20100711/c1815


…と来て、今回が第三話(概ね完結編)。いろいろ読んだり、見たり、聞いてきたりしたことを脳内で軽く反芻してまとめてみた。必要に応じて随時修正。
大前提となる話は、定番中の定番トランジスタ 2SC1815 が、2010年夏、「新規設計非推奨」(NRND)となった。ごくおおまかに言えば「ディスコン」ってことです。
もう、(プロは)チップトランジスタで全然いいじゃん、はわかったんだけど、アマチュアのホビー用途とか、ゆるーい試作とか、学生とか、そのへんはどうすればいいのさ、という話。因みに「小信号トランジスタなんかもういいんじゃね?」は案外そうでもなく、特に、マイコンでちょっとしたものを作る際に簡易なスイッチングをさせたり(電磁リレーとかをマイコンチップの出力でダイレクトにドライブさせるのはなんか避けたい気がする)、アクチュエータ(振動モーターとか高輝度 LEDとか)のドライブさせたりといった用途ではトランジスタ使ったほうが圧倒的に楽だったりするし、増幅素子としては、例えばオペアンプIC を普通に使用したのではなかなか難しい仕様の回路(超低消費電力の増幅回路とか*1)にトランジスタを使用する妙味があるそうだ。
電圧変換の場合は MOSFET とか使うのが楽なのかな? チャンネル数(信号線数)が多い場合は IC 使ったほうが楽だろうな。でも、1本だけ変換したいとかいうような場合には FET だろう。勿論トランジスタでもできる。
トランジスタでも FET でもどっちでもいいよ、というような場合には、トランジスタのほうがシンプルで丈夫で安心して遊べるかもしれない。勿論、半田ごてあてっぱなしでも大丈夫とか静電気流しても平気とか、そんなことは決してないわけだけれど、扱いやすいのはまあ間違いない。


というわけで、有用性はある、という大前提のもと、とりあえず「2SC1815 のかわり」の候補を列挙する。

【まずは後日追記から】チップ部品使うしかないでしょ、っていう。

トランジスタ技術」2010年9月号 p.231 に『代替が利く汎用小信号チップ・トランジスタを調査』という記事が掲載されているそうだ。

トラ技に言われちゃしょうがない♪

【もうひとつ追記】ちゃんと特性面も考慮すれば…

2012/05/28 に出版された 『合点!トランジスタ回路超入門』 には、巻末付録として「2SC1815の代替に関する試案」が掲載されている。それによると……
…詳しくは当ブログにおいて新たに別エントリを起こしましたのでそちらを御参照頂きたく。

回路シミュレータを活用しよう、という回避策。

チップ部品の問題は、容易且つ気軽に挿したり抜いたり、半田付けし直したり、ができないという点にあるわけで、そのへんの試行錯誤とか所謂(広義の)カットアンドトライみたいな作業は、シミュレータでやったほうがいいんじゃないか、という話。これにより、使う石の物理的な制約が大幅に緩和されることになる。
「気軽にできない」というだけであって、チップ部品のはんだ付け技術は本来(ホビーイストであってもですよ)あるに越したことはない。
シミュレータを使う限りは、キャパシタが爆発することもないし、パーツが接触不良を起こすこともないし、うまく動かなかったときに(可能性として)自分の半田付けの下手さを疑ってみる必要もない。いろいろ無謀にいじってみたい初心者、アマチュア、学生こそ、プロよりむしろこういうモノを使うべきという言い方もできる。
高機能なオシロやロジアナが無くても、持っているかのような計測ができる点もありがたい。

勿論、シミュレータは万能じゃないし、癖もあるのでこういうことを言ってもなかなか詮無いのだが、回路組むなら、というか、勉強するなら、勿論本物の回路組んでみなければわからないことは多いのだけども(トランジスタ燃やしてなんぼとか言いたいわけではないよ)、それでもシミュレータは使えたほうがいい、ということのようだ。
(私自身も未着手領域なので)ざっくり書いておくと、具体的には、ビジュアライズされ、且つ無料、若しくは安価な SPICE クローンを導入することになるだろうと思われる。 LTSpice が有名なようだが、某所では PSpice を奨められた。お金のある人は Circuit Viewer とか買えばいいんじゃないかと思う(オシロよりかは安い)。 Let's Google

いよいよ入手困難になってきたらセカンドソースで、でいいんじゃないの、という。

NRND (くどいようですが新規設計非推奨の意)はどうも廃番とは違うらしく、業者からの大量発注があれば生産もする、という説もある。当然、(買い占めみたいなことがなければ)即なくなるというわけではない。
2SC1815 にしても、まだ充分に店舗在庫/流通在庫があるわけだし、それがなくなったとしても、国産品が枯渇すれば海外に多数あるという噂のセカンドソース品*2が必然的に入ってくるんじゃないか、という楽観論。ただし、細かいスペックがさして関係ない以上、同一型番にこだわる意味があんまり無いとわかったうえで、それでも部品表どおりの同じ名前の石を使いたい、という場合に限られるが。
もちろん、セカンドソースというものの性質上、完全に genuine (オリジナル)と同等の性能が期待できるかというとそこはかなりあやふやと言わざるを得ないので、ホビー用途よりも厳密さが求められる用途の場合(どういう場合があるのかはよく知らないけど)注意が必要。そもそも、データシート記載の数値からして違うものも平気で「セカンドソース」扱いされているようだし。

海外の有名な石にシフトすればいいでしょ、という見解。

候補としては、2N2222A / 2N2907A*3 、 2N3904 / 2N3906 、 BC337 / BC327 あたり。

NPN   VCBO IC fT
  [V] [mA] [MHz]
2N2222A 75 800 300 (min.) @20V 20mA
2N3904 40 200 300 (min.) @20V 10mA
BC337 50 800 100 (typ.) @5V 10mA
(REF.)
2SC1815
60 150 80 (min.) @10V 1mA

   ※注意:fT は測定条件がそれぞれ異なりますので単純比較はできません
2N2222 とか TO-18(メタルキャンパッケージ)って、逆にいいかも*4。…高いけど。国内での入手は難しいかな。(※ 秋葉原では若松通商で購入可能でした。また、鈴商の店頭でも*5購入可能(2011/05 現在)。)

若干 hFE が低いのが気にならなくもない。
そして、やはり高い。


ただし、いずれにしても、NPN は入手できてもコンプリメンタリの PNP は品薄、hFE が別ランク、あるいはそもそも扱いがない、などのパターンも多く、今すぐ利用したいという場合には注意が必要。そして当然ながら足配列には充分注意が必要。これはなまじっか回路組み慣れている人のほうが危険かもしれない。
2SC1815 やその他の「ECB」(えくぼ)配列よりどちらかというと世界普及率が高そうな「EBC」足のほうが、なんとなく良好な入手性が長期間持続しそうな気がする。ということで私は 2SC1815 の代替は 2N3904 がベストなんではないかと思っている。というわけで各パーツショップさん 2N3904 と 2N2222A 、ひとつよろしくお願いいたします m(_ _)m


データシートからの転記とかあとでやるかもしれない。


あと、何を根拠に「候補」としたかというと、秋葉原のいずれかのパーツショップで常時在庫品としてコンプリメント・ペアが店頭にて入手可能かどうか、みたいなあたりが基準。


「次点」としては

  • SS8050D / SS8550D
    • 中国では”最もポピュラー”な Tr. だそうだがスペック的には別用途か。
    • 因みに韓国製らしい(KEC)
    • 入手できさえすれば、とにかく安い。
  • S901x シリーズ(S9011〜S9018)
    • 同じく中国ではメジャーな石とのこと。
    • 2SC1815 のかわりに敢えて使う意味は無いという気がする。
  • 2N5088 / 2N5087
    • 特性面から、交代要員としてはいまいちか。
    • 海外では汎用トランジスタとしてホビー用途の作例も多い模様。
  • 2N5551 / 2N5401
    • 海外ではメジャーらしいが現時点の国内入手性はいまひとつ。
    • やや高耐圧・高出力で、周波数特性なども別クラスの石という印象。
因みに…

海外メーカーでも互換半導体に注力しているところだと「ECB配列」のものも、結構出していたりするそうだ。必要ならば Fairchild あたりをざくざくざくっと探してみるといいらしい。

【余談】
「2N3904 / 3906 の代替」を探しておられる方をたまに見受けますが、これらは入手難度が低いので、代替品を探さず「そのもの」を御使用になることを当研究所ではお勧めいたします。

(どうしても別の石を使用したい…! という場合には 2N2222A / 2907A をお勧めいたしますが、かえってこちらのほうが入手難度は高いです (゚ー゚ )おねだんも少々上になります。 また、ギリギリの設計でない限り、2SC1815 / 1015 での置き換えも充分可能と思われます(ただし足の配置が異なる点に注意)。 少なくとも現時点(2012年)において日本国内で入手困難という観測はありません。


勿論、 2N2222A / 2907A に関しても、当研究所では「代替」ではなく「そのもの」を使用することをお勧めいたします。

【追記】【新規情報】国産の新規でリードタイプが全く無いかというとそういうわけでもないらしい

詳しくは未確認ですが、Panasonic の DSC4005 / DSA4005 というのが新規ラインナップされるリードタイプトランジスタのようです。

この PDF の下のほうにもありますが、「自立タイプ」と称する「NS」というパッケージが東芝でいう「mini」に近い形状のようです。(A1 と B1 の違いは、足がフォーミングしてないのとあるのと))

ニュースリリースがこちら。

「超汎用」という語の意味がイマイチよくわからない*6けども、定格が全て同一でパッケージだけ違うラインナップということのよう。試作→量産への配慮…? でもこれは使いやすいかもしれない。 公開されている範囲の定格を見る限りにおいては、2SC1815 とまったく同クラス。ただ、データシートが見つからないので、まあ、なんともいえない。

これが大々的に発売されるようになれば代替候補として非常に有力なのだけど…?
よくわからんがまだ発売はされてない…というかこのシリーズ自体が小売の市販はされていない(BtoB 展開のみ?)のかもしれない。(じゃ意味無いじゃん!)


要:静観。


【後日追記】 いつの間にか(少なくとも 2012年中には)ラインナップから外されていたようです。…やはりだめだったか。


結論(になっていないけども)


Twitter は勿論、いろいろなところを参考にさせていただきました。
特段の結論は出ないわけだが、実際問題としては別にひとつに絞る必要もないわけであります。さしあたり 2SC1815 は無くなりそうになるまでこのまま使い、その後適度なタイミングで EBC 足の 2N3904 あたりに移行すればいいだろう、というのが 熾火研究所的見解。

両方とも 2N3904 。左が PHILIPS (= NXP)、右が FairChild らしい。
安くはないし在庫量も貧弱だが、いま現在でも秋葉のショップでなら普通に入手可能*7なのがよい。価格は 1個あたり ¥20〜¥30 〜¥100 未満 程度。


あでも Panasonic の新しい石が大量に出回ったりするのであれば… んー。
まだもう少し様子見が必要なのかもしれない。

【少しだけ追記】そして EOL へ

続報というのかなんというのか…
いつの間にか「EOL announced」になってました(2011/05/07)。

*1:待機電流も消費電流も微弱なセンサユニットとか

*2:セカンドソース:同じような品質・性能をうたい、型番についても似たような番号が振られている製品(群)。リバースエンジニアリングに基づく要するにただのパクリだろ、というような代物から、元製品の製造元とちゃんとライセンス契約を結んで生産されたものまで様々あり、目の前のそれが「いずれ」なのかは必ずしもすぐに判らない場合も多い。もちろんその品質も、まったくお話にならない粗悪品からむしろ本家より優れたスペックを有するものまであるわけで、一概には言えない。
2SC1815 のセカンドソース品に関しては私の過去記事(の中程より少し下あたり)も御参照ください。

*3:若しくは 2N2905A がコンプリとして挙げられているようである(ただし 2905A はパッケージサイズが異なる)

*4:後継として樹脂モールドタイプが出ているようだけど日本ではあまり見かけないっぽい。
http://en.wikipedia.org/wiki/2N2222
TO-18 パッケージのよいところはブレッドボードなどに挿して使用する際、脚の配置が比較的自由であるというところにもあるかもしれない(3本の脚が直線的に配置されていないので)。

*5:web でもラインナップされていましたので通販でも入手可能。(ただし何故か「2N」は FET にカテゴライズされている)
http://www.suzushoweb.com/category_2.php?c2_id=159

*6:要は、耐圧 50V くらい、電流容量 100〜200mA くらいで、遷移周波数もそこそこ(数10〜100超MHz くらい)、でもって「電流増幅率の電流依存特性がよい」、みたいなことだろうと思う。

*7:海外の電気機器(特に音響製品)を修理したいなどでニーズがあるらしい。(まそれもどうかとは思うのだけれどね!)