東芝2SC1815代替の最有力候補がやってきた。


でました。(いまのところの)「最終解答」。*1

まず言っておきたいことがあります。

議論の端っこだけを捉えて「みんな 1815 が好きだねーwww」とか「なんで 1815 にこだわるのかイミワカンネ」とか言ったりしている人を最近見かけます。別に誰もこだわっちゃいないんですけどね。*2
自分で定数いじって回路をアレンジするだけの実力があり、且つ、自分の練ったプロトタイプを広く公開する気のないかたにとっては、ここには有益な情報はなにひとつありませんから、どうぞ今すぐブラウザを閉じてください。
まあ、そういう程度の内容であることを承知のうえで読んでやってもいいぞ! …というお心の広いかたのみ、続きをどうぞ。 m(_ _)m ↓↓↓






気を取り直して本題です

東芝が 2010年に 2SC1815 の NRND (新規設計非推奨)、そして 2011年に EOL Announced (生産終了予定)を通達するなか、これまで何回かにわたってブログ記事をエントリしてきたわけですが…

「結局のところ、どうしたらいいのか?」という問いに対する最終解答は誰も出せぬまま(勿論、当研究所も出せぬまま)徒らに時が過ぎ、いくつかの電子パーツショップでも値上がりが報告されるなど、ゆっくりとしかし確実にその「終焉」が忍び寄るのを誰も止めることができずにいた 2013年02月。


…やっぱり秋月さんなのかい!僕らの道を照らすのは!


海外製互換品の発売開始です。HFE ランクは Y と GR 。価格も、発売当初価格で 20個 ¥100 、1000個だと ¥2400 。もともと破格であった東芝の純正品よりも更に安いという。これまで中国品番などの格安トランジスタを代替に考えていて「…でも、足の配列が違うし…」とか「結局日本で買うとそんな安くないし…」みたいに悩んでいた人たちにも、福音といえましょう。
因みに UTC こと Unisonic Technologies (友順科技股份有限公司)は台北に本社を持ち、1990年設立というまだまだ若い企業。所謂「互換半導体」(セカンドソース)の生産で知られ、2005年頃から生産されているらしき 2SC1815 / 2SA1015 もそのひとつ。


因みに型番中の「L」は「ローノイズ」ではなく「鉛フリー(Lead Free)」の L である、とのこと。

しかし…まだ早まるべきではない……?

互換性に関しては、必ずしもメーカー保証されているわけではありません。

UNISONIC社の半導体仕様書には、東芝製2SC1815との互換性についての記載がありません。 従いまして、互換に関する電気的特性等は、お客様ご自身で双方の技術仕様書を比較いただき、ご判断ください。 また、大量に使用する際には、試作・実証実験によって安定動作をご確認ください。

http://akizukidenshi.com/catalog/faq/goodsfaq.aspx?goods=I-06477

また、

※Unisonic社は東芝セミコンダクタ社より許諾を受けて生産販売するメーカーです。

http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-06477/

とありますが、←【後日修正追記】秋月に問い合わせたところ「事実確認ができなかったため削除しました」とのこと。現在、商品ページからこの記述は削除されています。【2013/02/21】
Unisonic社と東芝セミコンダクタ社との取り決めに関しては、プレスリリースなど公式文書によるソース未確認(私もひととおり探しましたが発見できず)、従ってその「許諾」(が仮にあったとして)内容がどういったものなのかについては不明のままです。



更に言うと、NRND が発表された 2010年よりもはるかに前から、UTC社は 2CS1815 の生産を開始していました。ネットで確認可能なデーターシートのタイムスタンプは 2005年。このことからすると、東芝は自社で生産を続行している最中にセカンドソースの許諾を出していることになります。…か、若しくは、無許可で生産していたものを途中から許諾した、ということになります。【2013/02/21】
このへん、内容的に、やや疑問です。
ほんとうに東芝は、UTC に対して「許諾」したのでしょうか? 「許諾」したとしたら、それは何を? (そもそも許諾が必要なものなのでしょうか?)



もう一点。秋月では 2SC1815 の扱いは開始しましたが、コンプリメンタリ・ペアである 2SA1015 の扱いに関する情報は(いまのところ)ありません。現在問い合わせ中です。2SC1815 に比較して需要がおそらく数分の1 以下と思われる 2SA1015 を同一メーカーで揃えてくれるかどうかは正直微妙な線です。 【後日修正追記】「少量ではありますが入荷を検討しております」とのことでした。【2013/02/21】


情報が揃うのを待ちたいところ。
 →→→ 【後日修正追記】いまのところ、Authorization については「不明」(というかソース確認できず)、コンプリメンタリについては「しばし待たれよ」とのことのようです。【2013/02/21】


データシート上の互換性は完璧といってよい。

「合点!トランジスタ回路超入門」(庄野和宏:著)の p.248 によると(※ 相変わらず Appendix B しか読んでないのは内緒だ!)、互換性という観点から重要な電気的性質は以下のとおりとのこと。

  • 絶対定格のうち VCBO VCEO IC PC が同等かそれ以上であること
  • fT が同等かそれ以上であること
  • Cob が同等かそれ以下であること
  • hFE が同等であること
    • hFE - IC 特性が似たようなものであること
  • NF が同等かそれ以下であること)

データシートからこれらの数値を拾ってみると、

    TOSHIBA
2SC1815
UNISONIC
2SC1815
参考:Fairchild
KSC1815
参考:JCET*3
C1815
VCBO - 60V 60V 60V 60V
VCEO - 5V 5V 5V 5V
VCEO - 50V 50V 50V 50V
IC - 150mA 150mA 150mA 150mA
PC - 400mW 400mW 400mW 400mW
hFE IC=2mA 70〜700 120〜700 70〜700 70〜700
Cob - 2.0〜3.5pF 2.0〜3.0pF   〜3.0pF   〜3.5pF
fT IC=10mA 400MHz * 370MHz * 300MHz * 210MHz *
NF 6V,0.1mA,
1kΩ
1.0dB typ.
@1kHz
1.0dB typ.
@100Hz
1.0dB typ.
@1Hz
10dB max
@1kHz 10kΩ

     *:グラフより読取。*4

「2SC1815 の fT は 80MHz」という数字が独り歩きしている節があります。fT は測定条件に依存します。上掲のとおり、コレクタ電流をある程度潤沢にすれば「そこそこ伸びる」ことが知られています。

…ところどころ「都合のよい」データが見え隠れしていたりしなくもない。また、「互換品」をうたう部品のデータシートなのだから、当然同じ数字を書いてくるであろう、みたいなところはありますが、普通に使用するぶんにはまず問題なし、音響・計測など低雑音用途においては、テストが必要かも、といったところなのではないでしょうか。
いずれにせよ、静特性・動的特性はともかく絶対定格に関しては通常「データシートを信用するしかない」わけであり、この数字が同じということはつまり「同じように扱ってよし!」ということ…でしょう。


因みに hFEランクの区分けは同一です。

O Y GR BL
TOSHIBA 70〜140 120〜240 200〜400 350〜700
UNISONIC - 120〜240 200〜400 350〜700

   ※ Unisonic の BLランク品は 2013/02 時点で秋月扱いなし。


実際の性能に関してはどうなのか

とりあえず入手してみました。

すみっこのピンク色のパッケージは、マルツで販売している Fairchild社の KSC1815(Y)です。 1個 ¥21 。→ http://www.marutsu.co.jp/shohin_136679/ *5


…で、 DCA75でもっていろいろ比較してみようかな、などと思っていたのですが、如何せん、どこをどう比較したらいいものか、全くわかりませんでした。
いま、私が、そして電子工作クラスタの皆様が知りたいのは「セカンドソースとして優れているのか、それはどの程度優れているといえるのか」ということだと思うのですが、不勉強ゆえ、それを知るためにどういう試験をして、どう評価すればよいのやら、さっぱり…。
誠にすみません。 m(_ _)m

しかも、DCA75 のトランジスタテストはほぼ完全にオートレンジな為、グラフのスケールがまちまちでした。(変更はできますが、どこにどう合わせるべきなのかもわかりません)
もう少し勉強して、出直したいと思います。


とりあえず IC / VCE グラフを置いておきます。


2SC1815L-Y-T92-K : Unisonic Technologies



KSC1815YTA : Failchild



2SC1815Y : TOSHIBA



電子工作クラスタの皆々様の御尽力による実装運用テスト結果の積み上げを期待したいところです。(他力本願)…え、「焼いてみる」ぐらいおまえがやれ、ですか…? (´・ω・`)イヤダヨー…


…そんなわけで【後日追記】ざっくり御紹介
https://twitter.com/hmori/status/301937026683506688

https://twitter.com/hmori/status/301645416599019520

【後日追記】西からの援軍、妙楽堂。

見落としていましたが、海外パーツに強い京都の通販専門パーツショップ「妙楽堂」さんでも互換トランジスタが扱われています。…というか、2SC1815 のセカンドソースもだいぶ以前から扱われていたのですが(Fairchild)、価格的にはマルツよりも充分に魅力的であったとはいえ本家と天秤にかけると今一歩というのが正直なところでした。(また、一時的に品薄でもあったりしたようです)
しかし、新たに入荷していた JCET (長電科技;中国の半導体メーカー)製 「C1815」「A1015」は、1個あたり ¥4.8 と価格的にも充分に魅力的なラインに来ています。(※ 2013/02 現在)

ただし注意。hFE ランクは選べません。(当研究所が試しに購入してみたところ、「C1815」は Yランク、「A1015」は GRランクの品が届きました)
また、JCET というブランドについても、知られていない企業だけにその品質や信頼性は未知数。

刻印がほんとうの意味での「シルク」っぽいフォント。
なお、JCET の「C1815」「A1015」は頭の「2S」がつかないのが正式のようです。理由はわかりません。


2007年時点でも既に数社が知られていたセカンドソース品。今後もこうしたセカンドソース供給元は増えてゆくのでしょうか……価格も勿論ですが、安定した品質と、継続的な供給を期待したいところです。そして、あんまり乱立カオス状態になるのも…ねぇ。


それからそれから。秋葉電子工作クラスタにはお馴染みの aitendo でも、 C1815 セカンドソースの扱いがありました。…いつの間に。ブランドは、秋月扱いと同じ UTC です。

こちらで扱われているhFE ランクは…「2SC1815」は GRランク、「2SA1015」は不明(おそらく Yランク)です。実質的に「ランクの選択不可」ということのようです。

10個で ¥45 (※ 2013/02 現在)と、ちょっと試すにはいちばんお値打ち。



あと…

折角こさえたんで置いておく。


1枚もの PNG はこちら


適当に作ったもので クオリティ低いですけど御自由に持って行って使ってください。

*1:日本語おかしいです。暫定ならそれ最終解答じゃありませんよね…

*2:ICmax=150mA というスペックではマブチモーターやパワーLED のドライブには物足りないから、汎用とは言ってもなんでもこいってわけではないんですよね。> C1815

*3:長電科技 http://www.cj-elec.cn/en/

*4:Unisonic のデータシートでは fT の測定条件が VCEO=10V IC=50mA とあるが、グラフを見る限りにおいては 0.5mA か 5mA の間違いではないかと思われる。

*5:2013/02 現在、Yランクのみ扱い。また、同一ブランド コンプリ扱い無し。