トランジスタチェッカが進化した【DCA75】


遊べるガジェットというのはいいもんです



電子工作クラスタの皆様こんにちは。あと、あんまり気の乗らぬまま半導体や電子回路の勉強をしている皆様もこんにちは。最近全く電子工作をしていない「クラスタ迷子」の熾火研究所です。…というか、ここのところ全く何かを生み出すという活動ができていないわけですが、ほんとどうしましょうね。


…などという繰り言はさておき
当研究所で(も)以前御紹介しまして、日本でも定番計測ガジェットのひとつとして定着した感のあるイギリス製 トランジスタチェッカー「DCA55」。昨年、秋月電子がお手頃な価格で扱いを始めて、認知度もますます向上したこの子の、上位機種が登場しました。その名も「Atlas DCA Pro」。

販売価格に関してはちょっとした出来事があったりなどしたのだけど、現時点(2013/01/27)では秋月電子ストロベリー・リナックスにおいて、ともに ¥14175(通販送料別) 。なんにせよ、ちょっと遊んでみる目的のおもちゃの為に「ポン」と出せる金額ではありません。
※ 価格は変動の可能性があります。(というかたぶん変動します)*1

秋月価格では、弟分 DCA55 の 優に 3倍以上。本体サイズは同一、操作方法など基本的なコンセプトも同一ですので、何がどう変わったか、がポイントとなります。逆に、増強された機能が大して必要でもなければ、DCA55 を選択するというのも賢明です。(トライアックとか普通のホビー電子工作では使いませんし、三端子レギュレータの特性を取ってみる必要も普通はないですよね。こちらも御参照ください。


そんな次第で、DCA55 との違いを中心に見ていきますが、ひとことで言うと「DCA55 でいまいち届いておらず痒かったところに手が届いている(価格は高いけど)」といったところでしょうか

いきなりの追記:
DCA75 をはじめとする Peak Atlas シリーズの裏面止めネジは、日本で普通に使われている所謂プラスネジ(PH)ではなく、ヨーロッパを中心に使用されているという「ポジドライブ」(POZIDRIV®)というものでした*2十字溝に対して45°の方向に入った「ひげ」が目印です。プラ用のタッピングビスなのでプラスドライバー(PH2)を使用しても即破壊といったトラブルは発生しませんが、本来的にはおすすめできることではありませんので慎重を期するかたは「PZ2」というビットを入手することをおすすめいたします。

私も昨日知りました。☆(・ω<)【2013/04/20】


中身の違いはこんな↓です。(Twitter 公式アカウントより)
http://twitter.com/peakatlas/status/268658710128242689
*3
(写真では違って見えますが DCA55 と DCA75 は基板も同一サイズ・同一形状です)
DCA55 のほう(左上)も、初期型からだいぶ Rev.Up されているようですが*4、基本的に部品点数は少ない。対して、DCA75 はかなりぎっしり、部品点数も相当増えています。なるほど、価格差も納得、といったところでしょうか。*5
   
CPU は、PIC18F47J53 。(私のところに来た DCA75 の基板は青色でした)
なんでも低消費電力駆動にして USB 機能やら RTC やら内蔵のデキる子らしいです。
   

基板のおもて面。そのうちパーツを直挿しできるソケットでもつけようかとふと思ったので自分用に画像追加。リードの配列は、見えている面側で、左から 青、緑、赤。ランドピッチは残念ながら 2.54mm ではない(たぶん 3mm)。

おおまかには、DCA55 → 75 で だいたい以下のような点が改良されています。

  1. 液晶がグラフィックタイプ(フルドットマトリクス)になり、テキスト表示が 3行、部品図イラスト(アイコン)も表示対応となった。
    • 1画面に表示される情報量が格段に増えた。また、部品図アイコンのみによってサポートされる情報もあり(ボディダイオードの有無など)
    • ただし、本体のみでのグラフ表示機能はありません
  2. サウンド機能(BEEP 音)搭載

    • LCD 下(電池脇)の白い四角いのが圧電素子(ピエゾスピーカー)。
    • ON/OFF 可能(電源投入時に ON ボタンを長押しすると状態が toggle(ON←→OFF) される)
  3. USB 接続により Windows PC との連携が可能となった。
    • ファームウェアのアップデートが PC から USB 経由で可能*6
    • 液晶コントラストの調整が PC から可能(専用ソフトのメニューから)
    • 各種特性カーブが PC から取得可能
    • 電源は USB 経由で供給可能*7
  4. 判定対応デバイスの種類と判定項目が増えた。
    • 熾火研究所的には 青色/白色LED の判定が可能となった点を評価したい


      LED をカーブトレースすると一瞬ちょっと楽しい。(余談)
    • 低電圧ツェナーダイオードの判別も地味に嬉しいかも。(ただし、表示されるツェナー電圧はテスト電流(5mA)に応じた値となる(概ねカタログ値よりは低めになります))
    • JFET の IDSS も調べられるが、残念ながら CRD には非対応。ただし、P-N 接合のカーブトレースを取る方法はあるので、小電流(12mA まで)の CRD なら PC で肩特性を見ることが可能(チートは必要)。

       SEMITEC(石塚)と InterFET で特性カーブの違いがくっきりと(・∀・)
    • トライアックや SCR の判別もしてくれる(ただし制約あり:後述。
    • 三端子レギュレータの判定もしてくれるが、LDO を中心に誤判定率が高く、未知のデバイスを選別できるレベルではない。
  5. 測定値の分解能が上がった。
    • A/D は 10bit → 12bit 、測定値も小数点以下 2桁 → 3桁表示に
    • 電圧測定値の分解能も 20mA → 3mA に。
  6. 使用電池が 単4(アルカリ)× 1本となった。
    • 電池の入手がより容易となった。
    • 電池寿命(測定可能回数等)については未調査。ローバッテリ警告機能はある。


機能比較表(左が DCA55 、右が DCA75)

Peak 社 公式サイトより


というわけで、PC(※ ただし Windows に限る。)と接続することによって簡易カーブトレーサーとしての機能を有する点が DCA75 最大の「売り」と言ってよいかと思われます。勿論、本格的な業務用途の半導体カーブトレーサーには及びもつかないわけですが、±12V 、±12mA という小電力デバイスの動作範囲であれば デバイス適当に接続してほぼ数クリックのみで特性カーブおよびその数値データが取得できてしまう手軽さは、相当な威力です。



PC画面で情報表示。このテキストのコピペもできる。(因みにこれは 1N5231B (ツェナーダイオード; 5.1V 500mW))
バイスの判定取得は本体の ON ボタンを押してもよいし、ソフト上の「TEST」ボタンをクリックしても、どちらでもよい。重要な注意点としては、特性カーブ取得前には必ずデバイス判定をすること。カーブトレースの際のデバイスの極性などは判定の際に得られたデータが使用される為。*8

V-I 曲線グラフは重ね書きが可能。これは同じデバイス(5.1V ツェナー)のフォワード(順方向電流)側とリバース(逆方向)側を取得したもの。グラフ上で右クリックすることで、生の数値データをコピーできる。(※ Software Version 1.1.1.815 以降ではテキストファイルの保存も可能)


コピーしたデータを Excel などのスプレッドシートに貼り付けて加工すれば、自由にグラフ化できる。(上のデータを逆電圧側反転してマージしたもの)




トランジスタの場合。デバイスは、熾火研究所おすすめトランジスタ 2N2222A のコンプリメンタリ・ペアである 2N2907A(くどいししつこい!)



注意点としては、デバイスが DCA75 によって認識されない限りカーブトレースはできないという制約があります。たとえば既知の「仕様」として IDSS の低い JFET(e.g. 2SK198R)が「Voltage Regulator」と誤判定されることがありますが*9、誤判定あるいはデバイス不検出(「No component detected」)の場合には目的のカーブトレースはできません。

何回か挑戦するとうまいこと認識されることもあります(笑)
 
勿論、トランジスタや FET で任意の 2端子間の P-N 接合を描くなどの操作は可能ですし、別のデバイスで判定させておいてデバイスを繋ぎ直し、カーブトレースさせることは可能です(デバイスや DCA75 を破損しても知りませんよ、飽くまで自己責任で)。


あと、違う種類のデバイス判定噛ますと既存のグラフが消えるバグ あり(普通は消えない)。同種のデバイスを診断してるからといって油断してると、誤判定で描き貯めたグラフが消滅することがあるので注意………といっても注意しようがないよ…これは。こまめに「Copy Imege」や「Copy Data」(※グラフ上で右クリックすると出るコンテキストメニューから)で退避するしかないですね。
(※ 出現頻度不明、低頻度ではあるもよう。ソフトウェア Ver.1.0.2 において 1度だけ確認。)
 
【少々追記】PC ソフトウェアには若干の不具合発生がありうるようですがバージョンアップが既に何回かされており、改善が期待できます。ダウンロードは公式サイトのサポートページから可能。(※注意:ダウンロードは「激遅」ですw)

なお、Peak社 Twitter アカウントをフォローしておくと DCA75 Software のアップデート情報もすみやかに入手できるようです。また、ソフトウェアの設定でアップデートチェックを「自動」に設定しておくと、ソフト起動時にダイアログで表示してくれます。


ついでなのでここに(も)追記
PCソフトと本体ファームは必ずセットで更新するような設計のようで、ソフトウェアを更新すると接続された本体の更新も促されます。その際、ガイダンスに従って進めると必ず

このようなダイアログが出てファーム更新に失敗するようです。*10
メッセージどおり慌てず騒がず、メニューから「ファームウェア書込」を選択し、再挑戦してみましょう。


 
なお、Peak 社の同シリーズである「SCR100」(トライアック& SCR アナライザ)の機能を、DCA75 は一部カバーしています。ですが、そのテスト用トリガ電流は最大 10mA までであり、大型のデバイスは駆動できず判定できません。それ以上の電流でテストするには SCR100 が必要となります(ゲート電流 90mA まで対応)。




その他に関しては、取扱説明書が PDF にて公開されていますので、そちらを御参照いただくといいかと思います。英文ですが、非常にわかりやすい部類に属すると思われます。

このブログエントリ(ページ)も折を見て画像を増やすなど、内容をもう少し充実させる予定です。


【後日追記】公式説明動画が UP されました 【2013/02/25】


21分と少々長いですが、使用方法と機能をひととおり紹介しています。マニュアルに載っていない隠しアイテムも出てきたりしているようです。…ただし全部英語です(当たり前ですが)
【2013/02/27】 Transcript (書き起こし)が付きました。Youtube サイトに行って「字幕ON」にするか、若しくは動画下のコンソールで「Transcript」を選択することで読めます。よく聞き取れなかったデバイスの型番なんかもこれでバッチリです。ただし言うまでもないですが全部英語です(しつこい)。日本語訳つけようかとも思ったのですがβ版の翻訳機能を使えばインチキ日本語にできますし(笑)


DCA75 が絶讃推奨されるケースとは

コストパフォーマンスに優れた DCA55 、高機能が売りの DCA75 。どちらがよいか、というのは難しいところだと思います。トランジスタの hFEダイオードの Vf 、あとはこれらの極性ぐらいが素早く判別できればよいならば DCA55 で充分です。逆に DCA75 がおすすめなケースは、以下のような場合でしょうか。

  • どうせ買うならおもしろいほうがいい
  • どうせ買うなら数値精度高めのほうがいい
  • 安価で簡便なカーブトレーサーが欲しいのです
  • 青色LED はちゃんと判定してくれないと気持ちが悪い
  • よくわからないガラス封止ダイオードを判定したい
  • Microsoft .NET Framework 4 をガッツリ入れても構わない(システム要件は XP(SP3)以降)
  • 12V 電池(23A)は使いたくない
  • 刻印がよく読めないであったりなど全く謎なデバイスを調べることが多い
  • 主に使用する半導体の動作点が ±5V・±5mA より上、±12V・±12mA より下にある

    …ただし、デバイスチェック自体は DCA75 でも概ね 5mA 固定なので、そこは注意。

なお、デバイス判定所要時間は DCA55 のほうが早いものもあり、DCA75 のほうが早いものもあり、といったところ。MPUマイコン)の処理速度自体は DCA75 のほうが Microchip 社のカタログスペックで 2.4倍ですが、検出項目が多項目なぶんだけ DCA75 が特に速いわけではないです。


DCA75 にしても、DCA55 にしても、いろいろなシーンに持ち込んでいろいろ試してみると、非常に楽しい、且つ意外に役に立つのではないかと思います。


Enjoy your transistor life !!







…さて、あとはおまけ。


PSPのケースがちょうどいいですよ

写真は PSPgo 用のケースとのことで、ジャンク品扱いで格安だった。¥200.- 。

PSPgo だとぴったりすぎて余裕が無いので、一回り大きい PSP1000/2000 用とかで安く売ってるものを探してくるのがいいのかもしれない。
Nintendo DS 用だとちょっと小さいのかな。LLならいけるんじゃないでしょうか。




すべては4日間のうちに起こった。

まずはこれを御覧頂こう。

【2013/1/26 10:08更新】 カーブトレーサ付 半導体チェッカー DCA75 の価格推移:秋月15,700円 → 苺linux15,540円 → 秋月14,700円 → 苺linux14,175円 → 秋月14,000円 → 秋月14,175円 ←NEW!!
2013/01/26/10:39:25

https://twitter.com/mutu56xx/status/294981856816930816

秋月での販売開始は 2013/01/22 。(Twitter 非公式 Bot による速報が 2013/01/22/10:00:54。)ストロベリーリナックスによる発売開始日は不明だが、おそらくこれに前後していたものと思われる。そして 23日夜*11、秋月突然の¥1000 値下げ。
これに対し苺リナックス、24日午後にまさかの反撃的値下げ。
これで終わりかと思いきや、25日深夜に秋月再度の値下げ、苺価格を下回る。*12
さらなる混迷が予想されたが、翌日26日 土曜日の開店前までに 秋月が苺里奈たんと同価格まで値上げすることによりこの無益な争いは収束したとみられる。


しかし秋月は土曜日の営業時点には既に価格改定済みのチラシを用意しており、「実は出来レースだったのではないか?」などという疑惑も浮上したりなどした。*13


というようなちょっとした騒動があったわけです。


熾火研究所的には、¥1000 そこいらの価格競争などより、安定供給してもらえるほうがよっぽどありがたいと思います故、各ショップの皆様方におかれましては、是非ともよろしくお願い申し上げます(※ 私は PEAK の回し者ではないのだが…)。



などと言ってるそばから*14

勿論、安いのはいいことです。そこに異存はありません。
あと、出来レースではなかったことは確認できました。出来レースじゃなくて泥仕合でした




別に悔しくて言ってるんじゃないです。

悔しくなんかないです。

*1:ほら、もう変わった。(2013/01/30)

*2:参考:『IKEAのネジ』 http://chitei.blog108.fc2.com/blog-entry-220.html

*3:2012/11/14/01:16:43GMT

*4:cf. http://d.hatena.ne.jp/OkibiWorksLabo/20110813/DCA55#pcb

*5:Peak 社の Atlas シリーズの価格は使用部品点数によって決まっているのではないか、という噂が一部にあります。勿論嘘です。

*6:ただし、Peak 社 公式サポートページによると 2013/01/27 現在の最新ファームは Rev.0004 となっているのだが 、私の手許にある DCA75 のファームは 0005 。…はて?
→ 2013/02/02 ソフトウェアが更新されました。PCソフトウェア:1.0.4.737 、本体ファームウェア 0007 とのことです。ファームはソフトウェアパッケージに同梱されています。ソフトによって対応ファームも異なりますので、秋月の FAQ や表示されるアラートメッセージなどをよく読んで、慌てず落ち着いて更新しましょう。
→ さらに追記。その後も更新がされています。記事中に追記しましたので御参照の程

*7:USB 接続により電源は自動で ON となり、USB 接続中 オートパワーオフ・マニュアル操作による電源OFF ともに効かなくなります。
USBチャージャーなどから電源のみの供給も勿論可能ですが、その場合も電源のオフはできません(USBコネクタを抜くと強制 OFF)。

*8:via : 秋月の Q&A ページ

*9:cf. 同じく、秋月の Q&A ページ

*10:ファーム書き込み時にだけ DCA75 が「違うUSBデバイス」に変身する為に起こる現象のもよう。 → cf. 小坂先生の tweet

*11:確認 tweet2013/01/23/20:42:49

*12:確認 tweet2013/01/25/23:01:53

*13:https://twitter.com/minicube/status/295091999999135744

*14:確認 tweet2013/01/30/01:42:21