秋月テスタの APO 解除方法と AC電源対応改造(04)

前記事はこちら→「01」「02」「03」。

秋月電子のポケットテスタは しかるべきボタンを押しながら電源を入れるとオートパワーオフ(APO)が解除できる、ならば、連続使用を想定して AC 外部電源を使えるよう改造してしまおう、という話で、コネクタを収めるべくケースの加工のところまでいった。


なお、以下、いろいろやっているが、当ブログの内容を見てなにかする場合は全て自己責任で。事故・損害等に関し、当方は一切関知しない。怪我や火傷等には各自充分注意してください。


今回、改造を企てているのはポケットサイズのテスタであり、電源はボタン電池(LR-44)が 2個で 3V である。電圧も、消費電流もごく低いので、まんがいち何か間違っても被害はたかが知れている。しかし、AC アダプタを使用するとなると話は別で、仮にも一応 AC 100V を使用するということである。また、アダプタも最近のものはハイパワーであり、最大で 2A あたりを余裕でどーん!と流し込んでくる。これだけの大電流をショート若しくはそれに近い状態にして放置した場合、最悪、火災発生の危険だってあるわけで、配線は慎重且つ丁寧に行わなければならない。


ともかく。もともとある回路に AC からの電源を導入するには、回路を割り込ませる必要がある。

元の回路が(非常にシンプルに描くと)こうだとすれば、目標とする回路は

こうなる。(回路図の作成には BSch3V を使用させていただきました。記して謝意を。)
DC プラグが差し込まれると、もともと繋がっていた電池側のマイナス(-)が、DCプラグ内部のスイッチ機構により遮断され、かわりにプラグからの電力が供給される。この為には、できればやりたくないことだが、元の回路をどこかしらで切らねばならない、ということである。

電池の端子板、右側がプラス(+)、左側がマイナス(-)である。基板上のプリントパターンを追うと、ヒューズソケットのあいだ(中央)を上に抜けているのがマイナスの電源ライン。…ということで

パターンをこのように加工。わかりにくいが、下向き矢印の部分は、パターン(銅箔)の上に塗布してあったグリーンレジストを剥がしてある。上向き矢印の部分は、パターンを基板ごと削り取っている。これらの加工はカッターナイフでも容易にできるが、私は折角だから赤い扉を リューターとダイヤモンドビットを使用してみた。うっかりさえしなければいずれの方法でも難しいものではない。むしろ次の、半田付けのほうが厄介。

…厄介とか言ってる割には(画像が無いので)いきなり飛ぶが、配線完了。(ぉぃ)
DC ジャックの結線は、当然端子の位置が規格っぽく決まっているわけだが、テスタで念の為調べよう。あと、さも当たり前のように極性を決定しているが、当然のことながら使用したいアダプタの極性にジャックの極性も合わせる。私の手許には「センタープラス」の ACアダプタしか無いので、ジャックのほうも中の端子がプラスになるよう配線したが、たまに「センターマイナス」の ACアダプタもいまだに無いわけではない。その場合は、注意して配線を考える。私は所謂「右左病」というやつで 2値論理に極めて弱いのだが、そうでない人も、電源の逆接というのは意外なほど多い事故なので注意しすぎて困ることは無い。

余談になるが、ACアダプタの極性というのは、昔から非常に厄介な問題であった。メーカー毎に「センタープラス」であったり「センターマイナス」であったり、しかもそのプラグは同じ形状、ということで事故の元になりかねなかった。(更に、細かい話をすれば「外見上同じに見えるのに中の軸の太さが違って使えない」(2.1mmφ<>2.5mmφ)というような事態もありつつ…)そして、電圧もまちまち。これもまた誤挿入による事故を招きかねない。各メーカーは他メーカーのものや得体の知れないものの挿入による自己回避の為に「独自規格」または「あまり使用されていないレア規格」に走り、同じメーカー内で同じ電圧を使用するのにアダプタ形状が違うとか、様々な不便・不利益が生じた。 …ということで、ここから「極性統一プラグ」などという規格が登場するわけだが、これが事態を解消するどころか余計に混乱の元となった。ただ徒らに DCプラグの種類が増えただけだった。
現在も ACアダプタ、DCプラグの問題は全く解決したわけではないが、特殊規格でない、汎用性を考慮した機器では概ね「2.1φ・センタープラス」で設計されているようである。勿論、確認を怠ってはいけないわけだが。 そして「ACアダプタは専用品を使って欲しい」というメーカーは、全く独自の形状の DCプラグ・ジャックを搭載したりする傾向にあるようである。(ノートPC など。勿論、超真面目に「極統プラグ」を使用しているメーカーもある。)
因みに 秋月電子千石電商で販売している ACアダプタは、特価品やジャンクなどを除けば「2.1φ・センタープラス」で統一されている模様。

配線と半田付けに関して注意点を挙げると、

  • レジストを剥いた部分は非常に狭いので、しっかり付いたかどうかの確認がしにくいので要注意。アルコールなどで脱脂したうえ、フラックスを使用したほうがよいかもしれない。
  • 電池端子の部分にリード線を半田付けする際は、半田が溶けた際に端子板が取れたり曲がったりしないよう気を付ける。あまりコテをのんびり当てているとぽろっといってしまう。
    • ただし、あ、っと思って慌てて手を出すと火傷するのでもっと注意。
  • 接続部分の絶縁はきっちりめに。 特に DC ジャック周りは念入りに絶縁。(ただしあんまりやりすぎるとケースに収まらなくなるので注意。)
  • おしなべてスペースは充分あるので、リード線の長さは充分とっておいたほうがよい。


…つまりこういうこと。結局、裏蓋の隙間を引き回さなくてはいけないので、リード線の長さはそこそこ必要であった。この長さではどうやっても無理、ということで、線をまるっと交換。こういうとき、「折角付けたのだから…」なんてことを思わないでさくっと外して付け直す、それを無駄と思ってはいけない。(そりゃ、失敗したことにより資源など…は無駄なのだが、それをリカバーする作業まで混同して無駄と思う必要はない。)

これで容易に引き回せるようになった。因みに線の色を青から緑に変えたのに深い意味は無い。なお、ここで使用したリード線は細めのスピーカーコードとジャンク箱にあった適当なビニル線(外径約 1mmφ)なのだが、「電源だから…」といえいささか太すぎた。もっと細くてもよかった。


なお、詳細は省略するが、リード線を通す為に何箇所かケースを追加工している。線が無事通るよう、切り欠きを増やしてやらなくてはいけない。これは、どこにどう引き回すかによっても異なる(勿論使用するリード線の太さによっても異なる)ので、実際にやる場合は適宜工夫して欲しい。


さて、どうやらリード線の噛み込みも無く、蓋は一応閉まる。まずは電池で通電してみる。そののちに、アダプタ。

電池にて動作、グリーン。使用するアダプタは普通の御家庭なら必ず 1台はある、秋月の 3V 2A 品。ちょっと緊張の一瞬…

あっさりオッケー。

その後、各測定モードでテスト測定をしてみたり(これは USB 電源の電圧を測ってみている)、アダプタを抜き差ししてみたり、電池を抜いてアダプタだけで作動させてみたり、いろいろ試したが、特に問題なし。

因みに DC ジャック部分は、結構外からしっかり見えている。絶縁はかなり重要。なんだったら、ホットボンドとかシリコン樹脂で塗りこめてしまってもよいかもしれない。

テストリードを短くしたおかげで、楽に収まる。蓋も閉まる。
というわけで、めでたしめでたし、
となるはずだったのだが、沸々と沸いてくる疑問。「なんの保護回路も入れなくて、本当によかったのか?」


いや、3V のスイッチング AC アダプタを間違えず使用している限り、まず大丈夫だろう。でも、である。仮に、レギュレータ回路とか入れれば、別に 3V 以外のアダプタでも平気になるし、ついでに保護回路にもなるのでは?
コンパクトな 3端子レギュレータを使えば、案外内蔵できちゃうんじゃなかろうか。うん、できるでしょ。というか、やるでしょ。


…やめておけばいいのに、構想(妄想?)は膨らみ続ける。というか、ここからが本当におもしろいところなのではないかと!(この時点ではこの先起こる悲劇をまだ予想だにしていない。)


そんなわけで、まだ続く。→「05」へ