CRDとか好きだからー!

(別の場所から記事移動してきました*1


だいぶ古いものらしいのだが、「400個 ¥500」という ひと山なんぼ的な価格で売ってたのでついうっかりとぽちってみた。

返品・交換不可の「在庫限り」特価品なので、興味のある方はお早めに。


こんな CRD 、実物は初めて見た*2。…というか、TO-92 パッケージの 2本足なんて、いまや レア中のレアじゃないか。
現状(2011年現在)、日本で CRD というとほぼ SEMITEC(旧社名:石塚電子*3)一択。精度はいいが、なにぶん割高。数mA クラスのものでも普通に買うと 1個¥50〜¥120ぐらいする。秋月電子で 5個以上買うと 1個あたり ¥30、たぶんこのあたりが通常小売では最安。
 
石塚…ではなく SEMITEC の CRD 。白いほうは 27〜33mA つまり 30mA・Typ(※たぶんディスコン) 。ガラスのほうは 18mA 。

※ (Ctrl)抵抗は省略可。
CRD というのは構造的には JFET そのものなので(JFET のゲートとソースを短絡しただけ)、技術水準的に製造可能な企業はいくらでもある。ただ、「狙ったものを欲しいだけ製造する」のはたぶん「不可能」で、どうしてもばらつきが出る。というか、そういうものである。
JFET でみると、こんな按配。


現行のデバイスでもこれだけばらつく(というより「巾のあるものである」)。出荷時に「ランク分け」して粒を揃えている。これの場合は 0.3 〜 6.5mA を R, O, Y, GR の 4ランクに振り分けている。


だから、一応大体狙って製造し、できたデバイスの特性を計測して分別し、販売しているのだろう。これはどうしたってコストが嵩む。製品の精度を上げるということはつまり分別の刻みを細かくする、ということ。「売れない筋」が、必ず出てくる。たぶん「上手いこと出せば売れる」デバイスであるはずなのに製造メーカーが少ない(ほとんどない)のにはいろいろとそういう事情がありそうだ。意外にこまっかいノウハウが必要とか。あと、ビジネスモデルが組めないのとかね。
素人の想像だけど、たぶんプロはほとんど使わないのだろう。用途がホビーユース限定とあっては、出る数量も俄然知れている。 ちゃんと設計してあれば抵抗器で済むところに敢えて単価が数十倍の CRD を使う人はいない。使用条件がルーズなように見えて実は意外とタイト。パワーLED に使用するような 数10mA〜数A 駆動にはあんまり(全然?)向いてない。どっちに転んでも「微妙」なデバイスではある。
ネット上では「CRD がどうもばらつくようなので測定してみました。結果、ほら、こんなにばらついてました。正確に 10mA を示すものは…云々」みたいに言ってるのを見かけたことがあるが、「そうですね、そういうデバイスですからねー。」としか、正直いいようがない。


要するに微妙萌え。


さて、冒頭の「格安 CRD」についてであるが、データシートはネット上で見つかった。

一応画像化してクリップしておいてみる(←何故テキスト化しない自分*4

誤植(typo)修正済み。(クリックすると原寸表示します)


…ってこのデータシート、部品図が入ってないじゃないですかー!
というわけで、蛇足ではありますが、貼っておく。刻印面正面から見て左がアノード(A)、右がカソード(K)ですよ。


1983年当時の世界の CRD 。興味深い。因みに Vishay は JFET 生産から既に撤退したらしい(2008/10)。


J557 は定電流特性値が 3.6〜5.3mA(平均で4.5mA)と、巾は広い(要するにルーズな)ほうである…が、これは言い換えるとおおよそ±20%ということであり、Vishay の J500 シリーズとスペックシート上は同等と言ってよさそう*5。また、必ずしもひとつのデバイスの電流がそれだけの巾でぶれるというわけではなく、ある 1個を取り出した際にその範囲のどこかの値を持つことが保証される、というニュアンスである。

製造メーカーは InterFET というアメリカはテキサスの企業のようで、JFET 専業という業態は珍しい…のかどうなのかはよく知らない。現在は CRD そのものは出していないらしい。(JFET を短絡すればいいだけなので、用途カテゴリとして紹介はされている。)


…まあ、ともかくだ。
性能やデバイスサイズ(石塚…じゃなかった、SEMITEC の CRD は DO-35 (最も普通なアキシャルリードタイプのダイオードと同じサイズ))、古さ、精度、…その他もろもろを無視するならば、通常 1個数十円するデバイスが 1個あたり ¥1 強で手に入ったわけで、 CRD 好きならこの気持ちもきっとわかるだろう。4mA 程度ならいまどきの LED 駆動にちょうどいいし。


CRD 好きっていうのがいるのかいないのか、そこはとりあえず考えないでおく。私以外に。



…で、どうすんのかって? 使いますよ、勿論。


因みにですけども

書いていてちょっと気になったのが「SEMITEC株式会社」という、社名。よみがなが振ってあるんでもなし、アルファベット併記でもなし。なんで? こういうのってアリだったっけ。


…と思ったら、Twitter でちょうどタイムリーなリンクが流れてきよった。

平成14年の商業登記規則等の改正により,商号の登記について,それまでできなかったローマ字その他の符号を用いることができるようになりました。

…ほぅ。
「アリ」に「なってた」んですね。いつの間にか。

*1:追記していくうちに妙に気合が入ってしまったので…

*2:そういうものがあること自体は、CQ出版のオンラインPDFで知っていた。

*3:平成23年3月:石塚電子株式会社 から SEMITEC株式会社へ社名を変更」だそうです
http://semitec.co.jp/corporate/corp3.html

*4:HTML化 してるサイトなら既にあるので一応御紹介。
http://www.htmldatasheet.com/interfet/j557.htm)
因みに表中「J557」の型番に typo がある点に注意。たぶんオリジナルから。

*5:そもそも、J500 シリーズのセカンドソース的な位置付けで製造されたと推測される