秋月テスタの APO 解除方法と AC電源対応改造(05)
秋月電子のポケットテスタは しかるべきボタンを押しながら電源を入れるとオートパワーオフ(APO)が解除できる、ならば、連続使用を想定して AC 外部電源を使えるよう改造してしまおう、という話で、改造無事成功、めでたしめでたし、で終了のはずが まだ何故か続いている。
なお、以下、いろいろやっているが、当ブログの内容を見てなにかする場合は全て自己責任で。事故・損害等に関し、当方は一切関知しない。実際、私が痛い目に遭っているのを見れば何かしら学ぶところはあるだろう。
1台目の成功に気をよくして、別の場所に常駐させていた P-10 もそう日を置かず改造に着手。
委細省略するが、流石に 2度目だけあって作業はスムーズ。今回は DCジャックに基板取り付けタイプ(よく見るものより端子の細いのが千石電商にて販売されている)を使用。固定は両面テープによることにした。
左側が今回使用のもの。右が普通のタイプ。リード線を直付けするなら細いほうが楽。
前回の反省から、リード線はより細いもの(撚り芯耐熱ワイヤ:外径 約0.65mm)を使用。引き回しも相当楽になった。起動もオッケー。
ここで、ふと思う。そういえば私の手許には、5V の ACアダプタは何個あるかわからないくらいあるが、3V は 1個しかない。P-10 の常駐先には、3V のアダプタは無い。5V で、いやいっそのこと 12V でも使えれば…
なら、そうしようではないか。
3端子レギュレータで、小さな回路を組んでやればいい。
というわけで、できるだけコンパクト、且つ低ドロップな 3端子レギュレータを探す。何故ならば、折角だから 3V のアダプタでも使えるようにしたい、そうなると、電池駆動でローバッテリ警告の出るより上、2.6〜2.7V くらいは出力して欲しい。従って、標準でドロップが 0.3V あるとちょっと厳しいということになる。電圧可変タイプはドロップが大きいか、ボディが大きいか、価格面で痛いか、のいずれか。ということで固定電圧のものから、パッケージの小ささで東芝の 48M シリーズに決定。ドロップも最大で概ね 0.65V とあるが、この値は最大電流時の値だからテスタ駆動の際の電圧降下はもっとぐんと小さいと考えてよいであろう。で、定格電圧であるが、実験して決めることにする。
レギュレータの回路は極めてオーソドックスなもの。(データシートより転載)
まずはブレッドボードで組んでみる。
写真はテスタに実際に電源投入してみているところ…ではなく、ブレッドボード上の回路からコンデンサを外して容量測定をしているところ。47μF だと思っていた積層セラミックが実際は 4.7μF で、容量不足の所為発振してしまい表示が乱れてしまっていた。
わかりにくいよね。(でも 475 としっかり書いてあるので何もいえない orz)
…積セラが駄目なら…手許にあるコンデンサでコンパクトで 33μF 以上となると…むかーしに買ったタンタルの 33μ しかない。使いたくないが…仕方がない。実験してみると問題は無さそう。ま、いいか。
レギュレータの定格については、試してみて、3V タイプの 48M03F でいこう、と決定。2.5V だとローバッテリがすぐ出る。3.3V だと入力電圧 3V では少々心許ない。ドロップを考えれば 3V のアダプタを諦めて 3.3V のレギュレータを使用したほうがいいのだろうけど…。(酸化銀電池の初期電圧は 1.7V を超えることがあるから、3.3V を流しても回路のほうは基本的には大丈夫なはずではある。)
一応 回路図を挙げておくと、
→
これが前回までのところで、ここに
レギュレータ回路がこんな按配でくっつくという次第。
万能基板を小さく切り、部品を乗せて電源基板を作る。で、繋ぐ。このへん、別に問題など無いだろうということで、画像はもういきなりテスタに接続状態。
さて、どうやら問題なく動作するようなので、蓋も閉め、ネジで止め、一応いろいろ試しているうちにまずいことに気が付いた。レギュレータ回路を入れた所為で、電池で駆動する際にローバッテリ警告が出てしまうのである。電池を新品にしてみてもこの症状は変わらず。つまり、アダプタを抜いた際、電池からの電流がレギュレータ回路のほうへ逆流してしまっているのである。で、肝心のテスタのほうでは電圧降下によりローバッテリと。
これを解決するのは簡単であり、逆流しないようにすればよい。つまり、
このように、ダイオードを 1個入れればいい…しかしである!
ダイオードには、順方向電圧、別の言い方では、電圧降下(Vf)というものがある。電池からの逆流をストップできるのはいいが、今度は、順方向、即ち、レギュレータからの電圧はこのダイオードの Vf ぶんだけ低下してしまうのだ。所謂普通のシリコンダイオードを使用した場合、Vf は概ね 0.6V 程度。仮にレギュレータから 2.8V 程度が供給できていたとしても、ダイオードを通過する際に 2.2V まで低下する。これではローバッテリはおろか、 3V の回路など駆動できはしない。ショットキーバリアダイオードやゲルマニウムダイオードなどを使用すればギリギリいけるかもしれないが、あいにく手許に無い。どうする?
とりあえず、こうしてみた。
これが以前エントリした記事のダイオードアレイである。先にも書いたが、冷静に考えればこれでは駄目だということがすぐわかりそうなものだが、まあ、血迷っていたのであろう。5本のダイオードを並列にして組み、半田付けし、回路に挟み込んだ。
とりあえず順調に動いたようで、電池駆動の際はローバッテリ警告が出なくなった。ダイオードが逆方向電圧に対してはちゃんと機能している証拠である。また、偶然か否か、3V のアダプタでもなんとか動いているようだ。もともとのアダプタの出力が無負荷で 3.1V 強、テスタが消費する電力など微々たるものなのでほぼこの電圧が供給されるとして、レギュレータを通過した際の電圧は 3.0V 内外。ダイオードでの降下が 0.4〜0.5V 程度ならばローバッテリは出ないことになる。
あとで調べてわかったことだが*1、使用した 1N4148 というダイオード、電流が極微小な場合は Vf = 0.5V 程度に留まるようだ。結局ダイオードは 1本でもギリギリうまくいったかもしれなかったわけだが、てっきり「アレイ作戦」が功を奏したと思っていた私は次の瞬間、絶望の淵に立つ。
12V のアダプタを差した途端、音もなく、テスタの表示が消え、それっきりとなったのだ。
それ以降、テスタは何をやっても、どこをどう試しても、2度と作動することは無かった。
続く。(…まだ続く。→ 「06」へ)